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第82話 ダンジョン探索の再開

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-05-12 06:00:06

浄化が終わった後、俺達はエルセントさんを連れて街まで戻ってきた。

「ここまでで大丈夫です。それでは私はこれで。あなた方の行く末に神のご加護のあらんことを」

街の中に入るとそう言ってエルセントさんは教会の方へ帰っていった。

彼は最後までロンメルさんのことを聞かなかった。俺が話していた内容から街に関係者がいることは分かったと思うのだが、あえて聞かないようにしたようだ。

「もうすぐお昼時だな。ご飯を食べてからもう一回ダンジョンに行ってみるか」

「そうですね。またまたアキツグさんのおかげでダンジョン探索が楽になりそうですしね?」

『本当にあなたはトラブルに愛されてるみたいね』

「うぐっ。残念ながら認めざるを得ないな。でも、俺がっていうより俺のスキルのせいだと思うんだ」

言い訳する俺とそれを楽しげに聞く二人で歩きながら食堂へ向かった。

午後は話した通り、再度ダンジョンに向かう。

地下一階で幾度か行き止まりに当たったり魔物と遭遇したりしつつもどうにか二階への階段を見つけることができた。どうやら地下一階には罠は無いようだった。

地下二階に降りてしばらく歩くと何かがスキルに反応した。

「お?あそこに飛針の罠があるみたいだ。本当に罠を察知できるんだな」

「周囲は暗いですし、当然ですけど罠は分かりにくいことが多いんですよね。ダンジョンに慣れている人だと、経験で罠がありそうな場所に見当を付ける人もいるんですけど、今の私達にはそのスキルはありがたいですね」

『無機物のことは私にも分からないしね』

カサネさんも簡単なものなら対処できるし、上層のものなら仮に引っかかっても被害が少ないので回復薬などですぐに直せるという話だったが、掛からずに済むならそれに越したことはないだろう。

ちなみにロンメルさんに交換して貰ったスキルは罠察知と罠外しのレベルがかなり高かった。どうやら彼は罠の対処を専門にしていたようだ。

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スキル:罠察知Lv5、罠外しLv4、索敵Lv1、スラッシュLv2

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